魚住訪問看護ステーション便り『クローバー 🍀』
令和6年(2024年)春号
巻 頭 言
魚住訪問看護ステーションは、戸田内科・リハビリテーション科、現)戸田内科・脳神経内科から選抜?されたスタッフを中心に2015年(平成27年)の10月に開設した訪問看護ステーションです。
紆余曲折を経て、開設時の人員も今では私だけになってしまいましたが、今こそ最良の布陣と自負しています。
診療所では長らく「診療情報Himatsubushi(ひまつぶし)」を毎月発行していました。当時は現)院長 戸田和夫先生をはじめ、臨床検査技師の眞手先生がたくさん執筆してくださったこともあり、話題も豊富で、紙面はどんどん拡大、みなさんからの好評も後押しもなって、ついには毎月A4用紙で4枚分、A3裏表を毎月発行するまでに至りました。
魚住訪問看護ステーションに異動してからも、一時期『ステーション便り クローバー』を発行していましたが、忙しさにかまけて尻つぼみ。いつの間にか無期限休刊状態に…💧
毎度、今度こそは!と思いながら、すぐに挫折してしまう「ステーション便り」の発行ですが、懲りずに心機一転、再開しようと決意した次第です。
さすがに毎月とはいかず、季刊号(年4回位)くらいのペースで発行出来たらと思います。
少しでも皆さんのお役に立てる情報をお届けできればと思いますので、気長にお付き合いいただけましたら幸いです。
(編集責任者 丸山哲矢)
春はあけぼの
「春はあけぼの やうやう白くなりゆく山ぎは すこしあかりて 紫だちたる 雲のほそくたなびきたる」
とはあまりにも有名な清少納言の「枕草子」の冒頭です。春は明け方が一番趣深い!と記されているわけですが、2月から5月ごろ、時刻で言うと5時から7時ごろになるでしょうか。他方、唐時代の漢詩には「春眠あかつきを覚えず」ともあります。
現代では、花粉症で目がショボショボ。うかつに春の山際には近づけないという方も多いかもしれません。幸い私は花粉症ではないものの、至って「春眠」型なので、春のあけぼのの趣は知らずにいまに至ります💦 さて、みなさんはいかがでしょうか?
ようやく寒かった冬も終わり、徐々に日照時間が増え、気温も高まって、運動に適した時期になってきました。そこで今回は、春先の「運動」についてお話ししたいと思います。
運動に適した時間帯
まず、運動に適した時間帯についてです。当たり前のことですが、季節を通じて、すごく寒い時間帯やすごく暑い時間帯は運動に不向きです。せっかくの運動を安全に、また楽しく、そしてなにより効果的に行うためには、運動する時間帯選びは非常に重要です。
運動する時間帯を決めるに当たって注意するべき要素は主に2つで、ひとつは天気や外気温・湿度などの環境の要素、もうひとつは食事や睡眠との関係の要素です。
外気温や湿度について
まず、外気温や湿度についてですが、総じて言えるのは、気温は高い時よりも低い時の方が適切ということです。運動の種類や強さ、持続時間にもよりますが、基本的に運動によってヒトの体温は上昇します。他方でヒトは恒温動物ですから体温を一定(おおむね36℃〜37℃)に保つ必要があり、発汗や呼吸で体温を調節しています。つまり、暑い時の方がより積極的に体温を下げる必要があり、体への負担が大きくなるのです。
湿度も同様に、低い時の方が運動するのに好条件といえるでしょう。湿度が高いと汗をかいても、汗が蒸発せず、気化熱(体表面の汗を蒸発することで体温をさげようとする)によって体温を下げにくくなるからです。ですので、同じ気温でも湿度が低ければより効率的に体温を下げ、体温を一定に維持しやすいのです。その意味では、雨が降りそう、雨上がりのような時は運動するのには条件がよくありません。具体的には気温10℃前後〜18℃前後、湿度は50~60%程度が適切で、もちろん日にもよりますが、春先の天気の良い日であれば、10時~15時ごろになるでしょうか。
さて、しかし、実際この時間帯は、家事に!買い物に!と一日の中でも何かと忙しい時間帯とも重なるため、その貴重な時間を運動に充てるのには抵抗のある方も多いと思います。そこで運動に熱心な方に限って、朝がたや明け方に運動しよう!となる訳です。実は朝がたや明け方の運動には落とし穴もあります。それが、もうひとつの要因「食事や睡眠と運動の関係」です。
食事と運動の関係
まず、運動は食前よりも食後に行うのが適切です。食後は食事によって摂取したエネルギーがすぐに使える状態で血液中にあり、この時間帯に運動した方が、効率よくエネルギーを消費できるので肥満の予防にも効果的ですし、運動に必要なエネルギーがすぐに活用できるため、運動もより効率的に行えます。一般的に血糖値が最大になるのは食後30〜40分後ごろとされていますから、食後ひとやすみされてから運動を開始するとよいでしょう。
一方、朝食前は、前日の夕食から10時間以上経っていることも多く、1日の中でも一番エネルギーが枯渇した時間帯と言えます。また寝ている間にも汗や呼吸によって冬場でも500㏄程度、夏場では1000㏄以上の水分が消費されています。安全のためにも、食事、水分を摂取して30分以上経過してから運動するようにしましょう。
運動の内容や運動時間
具体的な運動の内容については、ストレッチなどの柔軟体操、軽いウォーキングなどが適当でしょう。柔軟体操、ストレッチなどは思いのほか重要でなのですが、意識できていない方も多いようです。例えば、10分の準備運動、15分のウォーキング、5分の整理体操をしている場合、当たり前ですが運動時間は30分なのですが、 15分のウォーキングだけを運動と捉える方が多く、少しでも早く運動を始めたいと準備運動を疎かにしてしまいがちです。そういう意味では、運動へのより深い理解が効果の高い運動への第一歩と言えるかもしれません。
ストレッチの極意
また、運動全般に言えることですが痛みを出さないことが大切です。筋肉のストレッチでは痛みを出すことでかえって筋肉は防御的に収縮してしまいます。ストレッチはケガの予防はもちろん、運動の質の向上がもたらされます。また、春先は外気温との急激な変化を避ける意味で、準備運動を屋内で行なってからウォーキングに出るのも効果的と言えるでしょう。
最後に具体的な運動の方法についてご説明したいと思います。
ウォーキングをイメージして柔軟体操するなら、特に重要な箇所は、アキレス腱、ハムストリング(太もも裏の筋肉)のストレッチが大切です。いずれも勢いや反動をつけて反復して力を掛けるのではなく、「筋肉の突っ張りは感じるけれど痛みは感じない」程度の姿勢で1分程度保持して、ゆっくり時間をかけてゆっくり筋肉を伸ばすことが大切です。左右を2回ずつ伸ばしても2箇所ですから10分もあれば十分にできてしまいます。下にその要点をお示しします。
① ハムストリングス(太もも裏の筋肉)のストレッチ
② アキレス腱(下腿三頭筋)のストレッチ
明け方の空気の澄んだ時間に運動すると気持ちいい!それはよく分かります。一部には「朝のラジオ体操」(今はテレビ体操?)など一日の始まり、朝に運動するのは体に良いことだ!という長年にわたる啓発の影響も少なくないでしょう。
他方、往々にして、効果のあるものほど正しく行わないと逆効果もあるものです。
今回は至って初歩的な内容で、いまさら!と思われた方も多いかもしれませんが、ひとりでも多くの方にこれを機に運動を始めよう!と思っていただけたら幸いです。
そして、せっかくのそうした前向きな思いが良い形で還元されてこそ「やり甲斐」が実感され、さらに次の運動へ!となるわけです。しかし、運動の効果は一朝一夕には得られません。「継続こそ力」なのです。
そういう意味では、「やり甲斐や効果の実感」が究極の奥義と言えるでしょう。
運動中に実感される方、体重計に乗った時に実感される方、様々だと思いますが、いくつになっても「ひとから褒められる」と思いのほかやる気になる、やる気が持続するものです。楽しんで続けるためにもおしゃべりしながら一緒にウォーキングをしてくれる運動仲間をみつけることも大切なことかも?ですね。
(理学療法士 丸山哲矢)